ふだんは患者でごったがえす病院の待合も、この三連休最終日の朝は人もまばらだ。
それもそもはず。祝日ということで表向きは外来を受け付けていないので、病院の待合はがらん堂だ。救急患者など特別な事情のあった患者だけが私を含めて5、6人、待合の長椅子に間隔をあけて膝を並べているのみである。
特別な事情のあった患者。私もその患者に当てはまるわけだが、特別といっても大した事情なわけでもない。前日に骨折して救急車で運ばれ、応急処置をうけた。整形外科の専門医は今日が当直なので、祝日だけどこうして通院したというわけだ。
私以外に待合にいる患者のほとんどは年配の方で、そのとき流行っていたインフルエンザの検査を受けていた。次々に呼ばれて、陽性だった陰性だったと結果を告げられて帰っていく。特に集団でうけているわけではなく、各々は個人で検査に来ているようだった。救急外来でもないこの人たちが、いったいどういう背景で休日の病院でゆっくり検査を受けていられるのか、その理由は私にはわからない。
インフルエンザの検査結果を告げられた患者が一人減り二人減り、待合には私ひとり残すのみとなった。
いや。
もう一人いた。
私の隣に少し間隔をあけて座る女性が、ひとり。