ヒゲそりという名のダンディズム

40を間近にして最近ヒゲそりをはじめた。
それまではヒゲを剃っていなかった。20代のころは幼く見える顔になんとか貫禄をつけたくてヒゲを蓄えようとしていたし(この頃は貫禄はつけるものではなくてつくものだということを知らなかった)、30代のころはあんまり何も考えてなかったけど別にヒゲを剃らなくても何とかなっていたような気がしていたので剃ってなかった。
さすがに年齢が40前後になってくると、人から少しでも不衛生だと思われると即不快感に繋がると思ったので正宗さん小ぎれい化計画の一環としてヒゲを剃ることにした。逆に言うと、30代までは多少不潔に見られても、見る人の見方によっては色気ともとれるのではというようなことを考えていたわけで、我ながら脇が甘い。
まあとにかく、男は40になったら清潔感にステ振り全力だ。

ヒゲそりについていろいろと試してみた結果、フェザーの両刃に落ち着いた。

これだと柄も安いが替え刃がとにかく安い。何より、ヒゲそりという日常の身だしなみ行為に自分のスキルが伴うという能動的な要素が入るところが気に入った。

そもそも何のためのヒゲそりなのか

ヒゲそりに手間をかけたくない…そんな人は多いがズバリ言うとわかってない。
40年間まともにヒゲそりしたことなかった私が言うのだから間違いない。私が筋金入りのわかってない人間である。わかってない歴40年の、君らより大先輩であるぞよ。
生存競争で不利にも関わらず派手な出で立ちであるクジャクの雄を例に出すまでもなく、本来男は身だしなみに気を付けるべきなのである。
女の身だしなみは装飾美だが、男の身だしなみは基本は機能美である。
クジャクの雄は装飾美なのでさっそく矛盾が生じているが説明するのに都合が悪いので忘れていただきたい。

そもそも何のためのヒゲそりなのか。
毎朝、自分のために15分、ヒゲそりの時間をゆっくりとること、これこそが男のダンディズムではないだろうか。

n+1枚刃のゲームからいつ降りるか

月並みな言い方だがカミソリの枚数が多すぎなのである。
はじめて2枚刃が出てきたときは凄いとおもったし、そこから3枚刃に増えたときもまあ、今後の展開は読めたけどついていく気は少しはあった。
本当に4枚刃、6枚刃と増えてきて「深ぞりだけを考えると、本当は2,3枚刃でいいんですが、枚数が増えると肌への負担が減るんです!肌への負担が!減るんです!」とか言い出しちゃうと、「肌への負担ねえ…」と苦笑いしか出てこなかったし、なんかついにモーターでぶるぶる震えるようになってくるといい加減ちょっと付き合い方を考えるような感じになっちゃった。

カミソリの替え刃商法については、フリーミアムの勉強してるときにそっちの観点から興味持ったことがあって、実は最近は少しずつ替え刃をアップデートしない流れになってきてるんだけど、それでもそのゆっくりとした流れを待つよりはこのn+1枚刃ゲームからさっさと降りたほうが益は多い。
つまり複数枚刃のカミソリをやめて1枚刃でヒゲを剃るべきだ。

そもそも、
ケガをさせないために刃を寝かせた
→刃を寝かせたから深ぞりができなくなった
→深ぞりができなくなったから刃を増やした
→刃を増やしたから値段が高くなった
この無限ループに対する我々の選択肢はいたってシンプル。
1枚刃でケガをせず深ぞりする練習をすればいい。
それか、このラットレースにいつまでも乗り続けるか。

毎朝ヒゲを剃るための腕を磨こう

練習!とてもいい!今まで受動的にやってた、つまり「社会人だから」という、具体的に誰のためなのかよくわからない圧がかかってやってたヒゲそりという行為が、全て自分のための時間にかわる。
なるべく手間なく簡単に済ませようと思っていた時間が、自分のために時間を作る男へと、生き方が変わる瞬間になる。

最初のうちはケガするが、やり方はyoutubeで調べればいい。

たぶん英語でヒゲそりの説明をしているはずだが英語はわからないので(もしかしたら英語じゃないかもしれないが、とにかく日本語以外の言語で喋っていると思うので)言葉はわからないが、見ているだけでもだいたいやり方はわかってくるはず。
英語がわからないのに、喋っている内容がヒゲそりの説明だとなぜ思うのか?
そこは我ながら不思議だ。もしかしたらヒゲを剃りながら「木星の表面に目玉焼きみたいな美味しそうな模様があって、ついつい見とれてしまう」といった話題をしているのかもしれない。わからないが、私は、そうじゃなくてヒゲそりの説明をしているのだと思った。

電気シェーバー

電気でヒゲを剃る?パソコンとかの電源のあの電気?きみらがいつもエロ絵とかみる道具につかってるパソコンの電源であるところのあの電気?
ありえんゎー。

毎朝刃物を扱う行為

人間は集団で地上最強、単体で脆弱な種であるから、人間同士の本質は協調にあると思う。
では男にとって刃物とは何のために存在するのかというと武器ではなく狩猟の道具だ。
だから、毎朝、カミソリ程度の小さい刃物を顔に当てて動かし方を練習する行為は、狩猟をして集団に貢献する、ニンゲンのオスとしてのプリメティブな価値を高めてくれるようにも思う。

それと、顔の凹凸をうまく立体として捉えないとうまく剃れないことから、毎朝鏡の前に立って自分の顔を立体として認識する作業。
いつのまにか年を重ねただけのヒトになってないか、
うまく大人になれているだろうか、
イヤな男の顔をしてないだろうか、
そういったことを自分と対話する時間にしている。

若いころを本当に雑に生きてきてしまったおかげで、年とってからたかがヒゲそりひとつとっても気を付けないと、心底ダメな人間になってしまう自分を癒してくれる本当の友達。
それがこの愛犬ロボ「てつ」です。

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